塩路先生 塩路ゼミ ゼミテン 掲示板 雑記 写真 リンク





インタビュー第二弾!!マクロ経済学のことから新三年生へのメッセージまで、様々なことを伺ってみました。

【マクロ経済学・先生の研究について】 

(ゼ)早速ですが、先生は今どのような研究をされているのでしょうか?

いろいろあるけれど・・日銀でやっている研究は、為替レートや原油価格の変動など、外国からの要因が国内の物価にどういうインパクトを与えているのかというものだね。貿易のかなりの程度が米ドル建てだから、為替レートが変化してもドル建てで見たアメリカの物価にあまり変化はないけど、日本の価格にはインパクトがあるのではないかということ。


(ゼ)完成度はどれくらいでしょうか?

一通りの区切りはつきつつあります。これはもともと地味な研究だったけど、去年一年間ですごく為替や原油が動いたでしょ。今はすごくホットなトピックになったと思います。



(ゼ)データ期間は?

日本が変動為替相場に移行した後、大体75年くらいから出来るだけとっているよ。大きなテーマとしては、外部環境の変化が国内へ与える影響の構造が変わったのではないかということだから、データを前半後半で分けたりして分析しています。



(ゼ)要因は何が考えられますか?

よく言われるのは、金融政策でインフレ安定化に重きがおかれるようになったこと。為替や原油が動くとすぐに日銀がその影響が出なくなるような政策をとるだろうと人々が予想するようになった。そういう政策のスタンスの違いが大きいと考えるから、当然中央銀行の政策が重要になってくるよね。でも私の研究結果によると、そういうことよりも産業の費用の構造が変わったこと、例えば輸入原材料が費用の上で重要でなくなったことの方が大きいのではないかと考えています。昔からやりたかったことで、マクロでも産業や貿易の構造が大事なのではないかということがあるけど、その点では今回は一歩踏み出したと言えるね。地味なデータ分析だけど面白い研究だった。



(ゼ)産業経済学はミクロの領域ですよね?

そうなると一つの産業だけになっちゃうでしょ。でもいろんな産業が材料を提供したり、それが川下に流れていったりするような構造も大事で、やっと自分の関心がそっちにいきかかっているって感じかな。



(ゼ)先生が長く携わっている研究テーマは何ですか?

おおまかにいえば国際経済学っぽい話がひとつ。もうひとつは金融政策だけど、どうして日銀が貨幣供給量を増やすような緩和的政策をとっても、あまり効果が表れなくなったように見えるかということ。それにもいろんな側面があるけれど、とりあえず今興味があるのは90年代半ばから見られるようになった爆発的な貨幣需要の増加。その理由のひとつは明らかに低金利で、定期預金よりは普通預金、更には普通預金でなくても現金でいいかっていうような流れだね。もうひとつは銀行の信用がなくなって不確実性が増したことで、人々がより流動性の高いものを持つようになったのがデータでも確認できる。ちょうど今金融危機でも流動性需要の高まりや不確実性が話題になっているよね。ミクロレベルで一人の消費者の話ならわかるけれど、どうして不確実性が増すと経済全体では貨幣需要が増加して資本ストックの供給が減ると考えられているのか。新聞でもそれが重要だと報道されているけど、マクロ経済学的に一つの経済の事例では考えたことがないのではないかと考えていて、ちなみにこれは去年日銀で研究したテーマです。



(ゼ)普段のお仕事はどういったものですか?日銀で教鞭をとっておられるとか??

それは夏休みだけの話ね(笑)大学の授業やゼミもそうだし、日銀でもこの研究室でも研究しているよ。ちなみに今も彼が研究しているところなんだよね。(※机の隅でパソコンが計算に取り組んでいました。)



(ゼ)日常の生活パターンはありますか?

出来れば生活パターンを決めたいけれど、毎日入ってくる仕事が違うからなかなか決まらないですね。日銀の研究は週一回で、実際に決まっているのはそこだけだね(笑)



(ゼ)研究室にはどのくらいいらっしゃるのですか?

何もないときは常にいるつもりだけど、大体何かあるからね。若い時は研究室にいたものだけど、最近は外での仕事が増えたよね。学会もあるし、学内の仕事もあるし。そういえば一昨日は卒業式の司会もやったよ(笑)



(ゼ)今後こういう研究をしていきたいという展望はお持ちですか?

さっき言った二つのトピックが中心だけど、もうひとつ挙げるとすればマクロ経済の生産性を決定する要因の研究にも取り組んで、そこから更に広げていきたいですね。



(ゼ)マクロ経済学の楽しさは何でしょうか?

なんて言うかなぁ・・少なくともこの国って一体どうなるのかってことに興味がない人に楽しさを説得するのは難しいよね。どうして貧しい人がいるのかとか、どうして貧しい国があるのかって何でもいいから興味が持てる人に向いていると思います。



(ゼ)そもそも経済学部に入学した理由は何ですか?

法律みたいにしっかりした規則で世の中が動くっていう面も勿論あるんだけど、最後には金の流れっていうか。そういうとドライな感じがしちゃうけれど、どう決まっているかじゃなくて、最終的にはみんながどうしたいかで決まってくるじゃないかなって。マクロを選んだ理由はさっきも言ったように、この国はどうなるのか、どうして今は景気がいいのかっていうような大まかな流れに興味があったからだと思うよ。



(ゼ)他の教科には興味を持たれなかったのですか?

今は御無沙汰しているけれど、一時期関心があったのは労働経済学かな。労働経済学の中でもマクロ的な視点があって、失業率がどうして増えたり減ったりするのかっていうことに興味があったね。



(ゼ)先生は東大を出て、イェール大学に進学なさいましたよね。修士課程や博士課程ではどのようなことを研究されていましたか?

まず東大にいたときは労働経済学の偉い先生に影響を受けてそういうことに取り組んでいたけど、僕が2年目の後半の時くらいに※吉川先生が移ってきたのかな。その辺からはマクロの実証研究に興味を持ったのね。周りに理論的な人が多かったから当時はそういうことに頭がいってなかったんだけど、そこで実証分析のやり方を学びました。イェール大学では経済成長論、ちょうど内生的経済成長論の論文がたくさん書かれていた時だったね。現在の授業にもつながるところがあります。

※吉川 洋先生は東京都出身の経済学者であり、現在東京大学経済学部教授。専攻はマクロ経済学。1974年東京大学経済学部を卒業し、1978年イェール大学大学院博士課程修了。大阪大学社会経済研究所助教授、東京大学経済学部助教授を経て1993年から現職。経済財政諮問会議議員。


【授業・ゼミについて】


(ゼ)今年の授業(マクロ経済学300番)は大好評でした。

試験の前まではね(笑)それに今年の授業はいろいろやろうとしすぎたね。来年は浮気をしないで成長論に特化しようと思っています。一回やって、学生の関心がわかったからね。まぁ、数学のレベルは今年度と同じくらいにするつもりだけど、結局は本人の努力次第になっちゃうよね。今年も2年生が思ったよりも履修して、中間テストでの健闘も嬉しい予想外だったよ。


(ゼ)授業がわかりやすいと評判の先生ですが、教え方については学ばれたのですか?

基本的には教わってないけど、アメリカに留学したのが大きかったね。セミナーのやり方に関しては当時の日本とは格段の違いがあったし、大学院生がセミナーの結果で就職がきまるというプレッシャーの中で鍛えられていくのを間近に見ることができたからね。人は一体どのくらい人にものを伝えることに真剣になれるのかっていうのは参考になりました。


(ゼ)僕らのゼミはメンバーで模索しながら進めてきましたが、先生はこれを勉強しろとはおっしゃらないですよね。


一応マクロ経済学のゼミだけど、入ってくる学生の関心はこれまでバラバラだったと思う。これをやれと言ってあまりに関心から遠ざかってしまうと困るからね。それに基本的にはゼミというのは学生が自主的に勉強する場所でしょ。


(ゼ)そういった指導方針は塩路ゼミの魅力でもあるのですが、やはり厳しくもありますよね。例えば最初に手に取る題材選びとかは・・。

マクロはミクロと違って必ずこれをやるというのがなくて、人によって考え方が違うから難しいよね。それにこのゼミではインゼミテーマにかなり縛られちゃうからねぇ。


【新三年生へのメッセージ】


(ゼ)どういう学生を歓迎しますか?

マクロ経済学で扱うトピックを自分の身の回りのことのように思える人、そういった共通した興味がある人がいいね。


(ゼ)勉強しておいてほしいことは?

やっぱりミクロ。といっても時期的にもう遅いよね(笑)基礎的なマクロではあまりミクロの知識が必要ないけれど、少し進んだものとなるとどうしても必要になるからね。辛い勉強ではあるけれど、やっておいてくれると助かるね。あと、並行してでもいいから統計学は勉強して欲しいね。経済のことを分析しようと思うと、統計学の基本は3年生のうちに押さえておくべきだし、卒論にも役立つからね。やっぱり論文というからには自分自身のものでないといけない。理論や語りだけで卒論にするのは相当大変だから、その際にデータ分析が重要なオプションとなるわけだ。とは言っても難しい定理の証明を求めている訳ではなくて、基本的なOLSとかの分析の背景を理解して欲しい。単に検定結果の星の数とかではなくてね。見方がわからない中で回帰をかけると、とんでもない分析になっちゃうこともあるから。



(ゼ)塩路ゼミで勉強に臨む上で求められる心意気はありますか?塩路ゼミに受け継がれるアイデンティティーとか。

そんなものあったっけ?


(ゼ)ないですね(笑)
でも諦めずに取り組む姿勢は大事ですよね?


それはもちろん。今年もゼミの募集要項に書いてなかったっけ。英語や数学を懼れてもいいけど、しょうがないから頑張るかっていう気持ちが大事だし、ある種の覚悟がある人に来てほしいね。


(ゼ)今年の選考課題も気になったニュースについて考えたことの論文ですか?

そうそう、あと身の回りで起こったことね。そういえば去年は毒ギョーザについて書いた人がいたね。


(ゼ)募集人数は?

10人程度を予定しているけど、10人を超えるとゼミの性質が変わってマスプロ教育的なものになっちゃうから、8人くらいが理想だね。今年は3班で分けることも多かったから都合も良かったし。逆にあまりに人数が少ないっていうのも、仲良くはなれるけど一人一人の負担が重いから大変だよね。


(ゼ)10人を超えると教室の収容も微妙ですね(笑)

かなり危ういね。あと、8,9人くらいだとそれぞれに参加している感じが出るからいいね。一班に4人以上いると俺はいいやっていう人がでちゃうかもしれないなぁ。



(ゼ)ちなみに僕たちの代(新4年生ゼミ)の印象はどうでしたか?

最終的にはすごく良かったよね。特にインゼミかなぁ。まとまりもよかったし、何より時間をかけて議論が白熱していたのが良かったね。私がいなくても白熱するっていうのは本来のゼミの目的が達成されたってことなのかな。



(ゼ)先生に頼り切ってしまった気がするのですが、迷惑ではなかったですか?

普通くらいじゃないかな。見ていて議論が堂々めぐりしたときには何らかの介入をするのが私の役割だからね。良かれ悪しかれみんなが対等だったから、熱心に議論に参加出来たのではないかな。



(ゼ)ゼミの形ですけど、個人的には議論中心のゼミにしたいと思っているんですが・・

ありじゃないかな。そういう意味では隙がある論文をたまにやるのもいいよね。自分たちの意見を出すことが重要だから、インゼミはその意味でも大きな一歩だった。最終的には論文で自分自身の結論を出していかないといけないから、印刷されたものをすべて鵜呑みするのは良くないよね。論文がすべて正しいという前提に立つと、論文をなぞった意見しか出せなくなる。そういうことまで出来るとすごくいいけどねぇ。



【プライベートセッション】

(ゼ)ご出身はどちらですか?


一応東京かな、出生地は足立区のあたり。日本でカバーしたのは一都三県。それ以外にはアメリカとスペインだね。


(ゼ)いつ頃から大学教授を志すようになりましたか?

大学院に進もうと思ったのは大学3年生の時。周りにそういう人が多かったので流されました。


(ゼ)中学・高校生時代の部活動は?

地歴部です。主な活動は野球と旅行(笑)


(ゼ)今でも野球をやることはあるんですか?

もうやることはないなぁ。野球もサッカーも観る専門だね。

(ゼ)ご趣味は?

サッカー観戦だね。バルセロナのファンで、国内は一応横浜ファン。でもサッカー観戦も結局4年生と行ったバルセロナ戦以来行ってないなぁ。


(ゼ)企画した際はぜひ御同行お願いします!

うーん、予定によるけど行きたいね。
でも観る分には野球の方が楽かも。交流戦の西武vs.阪神とか、みんな西武側に座って(笑)


(ゼ)一橋の研究環境はどうですか?

すごくいいと思うよ。似たような興味を持った人が多いっていうことは研究者にとって大事だね。


(ゼ)でもこの建物は機材の搬入とか工事とか多いですよね。

建物に関してはノーコメントで・・


(ゼ)教授同士での飲み会とかはあるのですか?ものすごくレベルの高い会話が繰り広げられているイメージがあるのですが。

そうでもないと思うよ(笑)マクロの話題も勿論あるけどね。


(ゼ)お好きな食べ物はありますか?コンパ係の悩みどころなので・・

食べられないものはないけど、飲み中心の会はきついかな。大好物は卑近なところではカレー。あと横浜中華街の「山東」の水餃子が美味しいんだけどね・・。


(ゼ)ゼミ合宿の場所はどこがいいですか?

あまりお金のかからないところで、あと少し騒いでもいいところがいいね。(※昨年の宿では別の宿泊客に怒られてしまいました。)


(ゼ)ご協力ありがとうございました!


聞き手  :大野&近藤
編集・文責:近藤



ページの最初に戻る  トップページに戻る